タイのデジタル課税、内閣会議で承認され国会へ

目次

  1. タイのデジタル課税、内閣会議で承認され国会へ
  2. 税法改定の内容
  3. e-service法で何か変わるか?
  4. 新しく課税対象となるのは?
  5. 執行と租税の取り立てについて


タイのデジタル課税、内閣会議で承認され国会へ

タイ政府は、6月9日にて海外籍のデジタルプラットフォームに対して付加価値税(VAT)を課税する税法改定(e-service法)の案を承認し、国会へ提出した。


税法改定の内容として、タイに子会社を持っていない海外籍プラットフォームに対して、eサービス税、つまり、付加価値税(VAT)を課税する方向で進めた。オーストラリアや韓国など、世界的に同じような法律を導入している国が増えていく中、この新しい税制により、年間30億バーツの税収入が見込まれる。


税法改定の内容

13条からなる
税法改定の内容だが、以下の要点にまとめることができる。

  • 1)定義については、『商品』の定義を修正し、『電子的サービス』および『電子的プラットフォーム』の定義を新規に定めた。
    • ・『商品』、従来の定義から、インターネットや電子ネットワークで引き渡される無形資産を商品の定義から除外する。
    • ・『電子的サービス』を、インターネットや電子ネットワークで引き渡されるサービス、自動的に行われ、情報技術なくしては成立できないサービスであると定義した。
    • ・『電子的プラットフォーム』を、複数サービスプロバイダーが利用者に電子的なサービスを提供するのに利用するマーケット、チャネル、あるいは他のプロセスだと定義した。
  • 2)海外の電子的サービスプロバイダーおよび電子的プラットフォームのVAT納税義務について定める。
    • ・電子的サービスプロバイダーについては、電子的サービスを提供する海外プロバイダーが、タイ国内にVAT登録をしていない利用者にサービスを提供し、かつ、サービスが国内に利用されている場合、もし、年収が180万バーツ以上あれば、付加価値税(VAT)の登録義務、納税義務があり、かつ、仕入れVATをもって売上VATから控除ができないと定めた。
    • ・電子的プラットフォームについては、上記のプロバイダーが、海外のデジタルプラットフォームを経由してタイ国内の利用者にサービスを提供し、サービスの提案、決済、引き渡し、およびほかに税務局の局長が定めるプロセスを有する場合、海外のデジタルプラットフォームが代わりに各プロバイダーの収入を集計して納税し、個別プロバイダーが個別に納税する必要がないとした。プラットフォームを経由した収入が合計180万バーツ以上あれば、そのプラットフォーム業者には、付加価値税(VAT)の登録義務、納税義務を持つと定めた。
  • 3)支払い手が、電子的サービスプロバイダーの代わりにVATを納税する従来の条項を明確化した。つまり、タイ国内の利用者がVAT登記をしている場合は、従来通り、支払い手のタイ利用者が代わりにVATを納税し、海外の事業者がVATを納税する必要がないとした。(よって、e-service法が、タイ国内でVAT登記をしていない個人利用者などに電子的なサービス提供する場合のみ適用するということになる。)また、サービスの種類が電子的サービスではない場合は、従来通り、支払い手が代わりに納税する原則を継続させるとした。
  • 4)電子的な方法を持ってVAT関連手続きを可能にし、タイに子会社がない海外法人でもVATの登録や納税ができるようになる。
  • 5)海外籍のVAT登録企業が、タイのVAT領収書を発行することを禁じる。


e-service法で何か変わるか?

本来、海外事業者からサービスの提供を受ける場合、2001年のタイ税務署見解から国内の支払い手が、海外事業者の代わりに納税すると定められた。しかし、実際、タイにおいて180万バーツ以上の収入がなければ、VAT登録をする義務もなく、支払い手に納税義務が発生しても、納税ができないため、海外サービスプロバイダーの利用者のほとんどが個人利用者である場合は、事実上、支払い手は納税せず免除に近い。一方、タイ国内に法人を持ち、ちゃんとVATを利用者からチャージして納税する企業との間で、不当競争が問題視され、世界的にデジタル課税の流れが出てきた中、今回の税法改定につながった。

今回の税法改定においては、タイ国内の利用者がVAT登記事業者(多くは法人)である場合、支払い手が代わりに納税する原則がそのまま継続され、法人顧客がメーンの海外サービスプロバイダー、プラットフォーマーは特にVAT登記、納税する必要がないと考えられる。その代わりに、VAT登記をしていない個人利用者が多い海外サービスプロバイダー、プラットフォーマーが、課税対象となる。

現在、タイでVAT登録をするのに、法人登記や住所証明などを提示する必要があるのに対して、タイに法人のない海外事業者でも電子的な方法でVATの登録、納税が可能になる。一方、VAT登録の海外事業者については、売上VATと仕入れVATの相殺が禁止されていることや、タイのVAT領収書を発行できないなどの条項も盛り込まれ、間接税よりも、事実上、売上そのものに対しての課税に近い。


新しく課税対象となるのは?

法律が執行されていれば、主に海外からB2Cベースでサービスを提供しているプラットフォームが課税対象となる。

  • ・映画や音楽プラットフォーム:ネットフリックス、ユーチューブ
  • ・ゲームやアプリプラットフォーム:App Store、Play Store、Playstation Store
  • ・ホテルやチケット予約プラットフォーム

将来、タイのユーザーに対する、サービス料金の引き上げにつながると予想される。

一方、B2Bについては、タイ法人が利用者であり、かつ、国内に対して役務を負う場合は、そのタイ法人が代わりにVATを納税すると以前から定められており、利用者法人が以前から代わりに納税していたため、今回の対象外となる。

しかし、法人、個人両方とも顧客を抱える場合は、VAT登記確認などの作業が発生する可能性がある。例えば、広告プラットフォームやクラウドサービスは、両方の利用者があり、具体的にどのような手続きとなるかについては、税法改定が成立し、税務署のさらなる見解を待つ必要がある。


執行と租税の取り立てについて

今回の税法改定については、まだ、執行の面について疑問視がされている。海外の事業者が納税に協力しない場合、現状、その国において徴税を担当する政府機関に対する協力依頼、徴税の代行依頼しかできない。しかし、将来、より強力な措置がとられるよう、サービス提供の遮断や、タイ国内における決済の差し押さえを可能にする法律を出す可能性もある。

タイの記者が、ネットフリックスに対してインタビューをしたところ、e-service法に対して、現状、特にアナウンスすることはなく、基本的に各政府に対して協力する姿勢だと述べた。今は、タイユーザーに対してよりよいサービスを安く提供することに注力したいともコメントし、今後も、支払い用のプリペイドカードをコンビニや店舗などに導入したり、タイのローカルコンテンツをもっと投入したりするなどサービス強化をしていきたいとのこと。

引用元

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