▼国家戦略としての観光政策
タイ政府は、1960年3月にタイ王国初の独立行政機関として、TAT・タイ国政府観光庁(現在は「観光スポーツ省(MOTS)」内部部局観光開発局)を発足させました。以降50余年に渡り政府主導で観光立国を推し進め、観光情報の提供やPR活動のみならず、観光地の調査及び開発、お土産などの商品開発、人材育成まで幅広い活動を行っています。1968年のチェンマイ事務所開設以来、徐々に拡大し現在ではタイ国内35ヶ所。ヨーロッパ6、東京・大阪・福岡を含むアジア17、米国2、オーストラリアと、国外26ヶ所で事務所を運営しています。
▼タイの観光政策の歴史
1960~70年台にかけてのベトナム戦争では、パタヤ近くのウタパオ国際空港が米軍のベトナム出撃の拠点となりました。このため米軍兵の保養地としてパタヤは発展し、1980年に観光客は200万人を超えます。その後、外国資本の導入や行政が主導する形で、プーケット、サムイといったビーチリゾートを開発し1990年には550万人。金融バブルや高度経済成長を経て96年に750万人まで増加します。
記憶されている方も多いかと思いますが、「アメージング・タイランド」と呼ばれる大規模な観光キャンペーンを1998年より行い、ついに2001年には、創立当時8万1千人に過ぎなかった訪タイ外国人客は1000万人を突破する事となりました。
以降、SARS、スマトラ沖地震に伴う津波、洪水被害、相次ぐ政情不安などに見舞われながらも、アジア地域内の経済成長に伴う中間層拡大や、LCC(格安航空会社)の普及などを追い風とし、2011年1923万人、2012年2235万人、2013年2655万人と順調に成長していきます。
2014年は戒厳令と軍事クーデターにより2481万人と数字を落としましたが、2015年には2,988万人とほぼ3000万人まで到達し、2016年は3200万人の外国人がタイに訪れると予測しています。2013年の観光客到着数世界10位、観光収入7位の421億ドル(国連世界観光機関発表)の数字が示す通り、既にタイは世界有数の観光国となっています。
▼タイにおける観光産業の位置づけ
タイの観光産業は、国内総生産(GDP)の11%を占め、200万人もの雇用を生んでいます。特にバンコクでは、観光関連業が都のGDPの40%を占めるほどで、観光産業はタイ経済の大きな推進力となっています。このためタイ政府は、年間旅客5290万人のスワンナプーム、3030万人のドンムアン各空港からのアクセス改善に力を入れており、BTS・地下鉄の延伸など、バンコク中心部の交通システム整備も急速に進めています。
▼タイの観光付加価値
温暖な気候と雄大な自然、アユタヤ遺跡を代表とする数々の宗教的建造物や伝統舞踊と、数々の観光資源に恵まれたタイですが、かつてはそのコストパフォーマンスの高さから、バックパッカーのメッカでした。しかし近年は、快適な空間と洗練されたホスピタリティーを提供する、富裕層をターゲットとした隠れ家的リゾートや、エコツーリズム、ボランティア、ホームステイといった体験型観光が増え、より多様性をもったものとなっています。
このように、先進諸国のサービスをタイの恵まれた環境で洗練させることで、これまで以上に観光価値を高める方向に舵を切っています。またタイ国政府観光庁が創立50週年を迎えた2010年には、「外貨獲得目的の観光政策から、環境配慮型へ移行していく」と観光庁総裁が述べており、今後もこの方向に伸ばしていくものです。
▼タイ政府が進めるMICE(マイス)マーケットの誘致
Meeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(社員旅行など報奨旅行)、Convention またはConference(大会・学会・国際会議)、Exhibition(見本市・展示会)の頭文字で、主にビジネストラベルをさすものです。この種の旅行客は、一般の観光旅行客以上に滞在期間が長く消費額も多いという特徴があり、大きな経済効果を生み出すことから近年盛んに誘致合戦が繰り広げられているものです。また人と人との交流が主目的となるため、国内に新しいビジネスやイノベーションを発生させる可能性も高く、人・情報のネットワーク構築など、様々な分野で国際競争力を高める事も期待しています。地理・経済的に東南アジアの要衝にあるタイは、シンガポールなどの近隣諸国を経由した観光・商用客の利便性も高いため、国際空港が整備されているバンコク、チェンマイ、パタヤ、プーケット、コンケンを中心にMICEマーケットに力を入れています。
▼タイのメディカルツーリズム
タイには350の私立病院があり、うち150ヶ所がバンコクに集中しています。これらの病院には先進国並みの設備が整い、海外の医療先進国で技術を学んだ医師により、低価格で高品質な医療サービスが提供されています。このため高い医療技術を求める中東の富裕層や、医療費が高額な欧米を中心とした医療目的の観光客を中心とし、年間140万人(2008年)もタイを訪れ、その市場規模は2000億円といわれています。
▼訪タイ日本人観光客
2015年度の国別訪タイ人数トップ10 は以下のとおりです。
1:中国 794万人(前年比71.1%増)
2:マレーシア 342万人(同31%増)
3:日本 138万人(同9%増)
4:韓国 137万人(同22.3%増)
5:ラオス 123万人(同17%増)
6:インド 107万人(同14.6%増)
7:英国 95万人(同4.3%増)
8:シンガポール 94万人(同11%増)
9:ロシア 88万人(同45%減)
10:米国 87万人(同13.6%増)
2013年に150万人とピークを迎えた邦人観光客も、2014年の反政府デモ・戒厳令・軍事クーデターといった混乱により126万人へ減少しましたが、2015年は8月の爆弾テロ事件がありながらも138万人まで戻しています。
現在タイへ訪れる日本人観光客は、初回訪問が20%、リピーターが80%となっていますが、2020年までに30対70の割合に変えつつ、日本人観光客を200万人にまで拡大したいとしています。また日本人観光客は滞在期間も短く、滞在中の1日あたり消費金額も欧米人の7000B程度と比較して5000B程度と少なくいものです。
このためタイ官公庁は、歴史や魅力のある町の紹介に力を入れ、バンコク・チェンマイ・プーケットといった人気地域以外への集客と、リピート客のさらなる掘り起こしを行ってながら、これまで多くなかった若者層やゴルフ・マラソンと言ったスポーツ系ツーリストの拡大にも力を入れています。
▼タイのホテル・ゲストハウスの室数と宿泊数
タイ統計局の2014年調査では、タイ国内のホテルとゲストハウスの合計数は1万18軒となっています。総客室数は45万軒で、うち34%の15万5000室をビーチリゾートの多いタイ南部が占め、バンコク8万7000室、中部11万2000室、北部6万1000室、東北部3万9000室という内訳になっています。
また2013年のタイ国内宿泊者数は、延べ1億1090万人で、タイ人4940万人、外国人6450万人でした。地域別ではそれぞれ、南部1000万人・2740万人、バンコク690万人・1580万人、中部1640万人・1220万人、北部830万人・510万人、東北部780万人・100万人となっています。
タイ国政府観光庁
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タイ国政府観光庁FBページ
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タイ国政府観光庁所在地情報
1600 New Phetchaburi Road, Makkasan, Ratchathevi, Bangkok 10400
TEL:02-250-5500
最新観光情報のコールセンター(英語・タイ語)
電話番号1672(タイ国内からはこの4桁のみで通話可能)