タイの産業
日本人には、タイの主要産業として天然ゴムや米などが馴染み深いものです。しかしタイ政府は一次産業からの脱却を図るため、自動車、電子・コンピュータ、食品加工、医療、観光の5つの分野に力を入れてきました。 現在でも産業別就業人口の4割を農業従事者が占めていますが、既にGDPで12%、総輸出額に占める割合は8%に過ぎないものとなっています。 80年代以降、日本を始めとした海外からの直接投資による工業化が進みました。このため現在では、自動車、コンピューター関連など製造業が大幅に増え、全就業者の15%が製造業に従事し、GDPの34%、総輸出額の90%近くを占める工業国へと変貌を遂げています。
日本とかかわり合いの深いタイの産業界
特に日本が強く関わるタイの産業に自動車製造があります。自動車販売シェアの6割を、トヨタ、いすゞ、ホンダが占め、さらに三菱、日産、マツダ、スズキがこれに続きます。実にタイで生産される自動車の9割が日本メーカーのものです。 2012年には、年間製造台数200万台を達成しその過半数を輸出する、まさに「アジアのデトロイト」と呼ばれるにふさわしい、生産台数世界10位の自動車大国になっています。 貿易相手国としても、日本とタイのつながりには深いものがあります。タイの輸入相手先国はASEAN18.0%、中国16.9%、日本15.6%がベスト3となっており、日本側から見ても米国、中国、韓国、台湾、香港、に次ぐ大きな輸出先となっています。
タイの経済を牽引する観光業
タイは以前から海外旅行客が多く、国別収益額トップ10の常連国でしたが、2015年度の訪タイ観光客はついに3030万人を突破しました。 その25%を占める中国人、隣国のマレーシアに次いで、日本からも国別訪タイ人数第三位となる年間138万人がタイに訪れています。 またタイ政府が政策として推進する、メディカル・ツーリズムも国の経済に大きな貢献をしています。日本の大病院と比較しても、なんら遜色ない設備の病院に、医療先進国で教育を受けた優秀な医師が勤務しています。 JCI認証(世界基準の患者安全・感染管理・医療の質に対する認定)を受けた病院数は、アジア随一の37病院を数えます。 確かに地方都市の医療レベルはそれほど高いとはいえませんが、日本にJCI認証病院が10しか無いことを考えても、バンコクの医療レベルは東南アジアで有数のものと考えて間違いありません。 このように、中東の富裕層やヨーロッパからも数多くの旅行客がタイへ訪問しており、メディカルツーリズムを含めた観光はタイの重要な産業となっています。
中間層の増加による産業構造の変化
タイではここ10年ほどで名目GDPが倍増したため、世帯可処分所得5000ドル以上の中間層が爆発的に増加しました。このため国全体の消費意欲が高まり、これまで無かった業態のビジネスも成立するようになってきています。 親日国として知られているタイですが、日本の文化やサービスは驚くほど深くタイ人の生活に入り込んでいます。バンコクでは数えきれないほどの日系飲食店がタイ人向けに営業を行っており、スーパーやデパートでも日本の商品が日常的に手に入ります。このようにタイ経済は、一次産業主体のものからサービス業を中心とした、三次産業へと産業構造を変化させています。