1999年以降義務教育期間が延長されたこともあり、タイ政府の発表しているタイの識字率は2000年92.6%、2005年93.5%、2010年96.4%と徐々に上昇し、2005年の時点で青年層は98.1%となりました。また小学生の就学率がほぼ100%となったため、時間の問題で日本・香港・韓国といったアジア上位の国々と肩を並べる識字率になると予想されています。また現状では、15歳以上の識字率は女性より男性の方が高くなっていますが、これは識字率の低い国の特徴で、国全体の識字率が高まるとともに男女逆点する傾向があるものです。
タイの教育制度は「6・3・3・4制」で、義務教育期間は日本同様9年間ですが、1999年以前の義務教育期間は6年でした。新学期は5月16日に始まり、9月末頃から10月半ば頃までの中休みを挟み、翌年3月半ばまでの2学期制を敷いています。飛び級などで教育課程を終了している場合や病気を除き、理由なく児童を就学させなかった保護者には1,000バーツの罰金が課せられます。外国人に就学義務はないため、日本人の子息は日本人学校やインターナショナルスクールに通うことが一般的ですが、タイ人と外国人の国際結婚家庭では、タイの公立学校に通わせるケースもあります。また外国人も、教育省の許可を受けてタイの国立学校に入学することは可能で、その場合も授業料は無償となっています。
タイの小学校は「パトムスクサー」の略の、ポー1(ヌン)からポー6(ホック)の6年間で、5月16日の時点で満6歳の児童が入学します。就学遅れや外国人を含むため就学率は102.7%(2013年タイ教育省)となっています。また幼稚園の年少・年中・年長さんにあたる、アヌバーン1(ヌン)からアヌバーン3(サーム)と、就学前に2歳児が通うトゥリアム・アヌバーンがあり、就学率は74%となっています。
ちなみにタイ語能力判定としてよく耳する「ポー・ホック」は小学校6年生レベルのタイ語能力という事ですが、2008年度からタイ教育省が新たに定めた検定基準の、レベル1(小学生未満)、レベル2(小学校低学年レベル)、レベル3(小学校高学年レベル)、レベル4(中学生レベル)、レベル5(高校生レベル)の5段階となり、現在はポー・ホックという資格は無くなりました。
タイの中学・高校は「マタヨムスクサー」の略の、モー1(ヌン)からモー6(ホック)の6年間で、就学率はそれぞれ96.8%、75.1%となっています。中学校卒業時に職業高校「ポー・ウォー・チョー」へ進む生徒もいます。その場合、職業高校の卒業資格では大学の受験が出来ないため、職業大学「ポー・ウォー・ソー」(2年)へ進み、卒業後に大学3年に編入する道が用意されています。また高校一年の時点で文系・理系を選択しますが、文系を選択した生徒は理系大学へ進学できないため、取り敢えず理系を選択するというケースも多くなっています。
タイの大学は「マハーウイティヤライ」と呼ばれ日本同様満18歳で入学しますが、タイでは飛び級が認められていることから年齢は人によって異なります。タイの大学進学率は51.37%で、アジアでは日本についで高いものとなっています。また男性44.62%・女性58.24%と、女性の進学率が高いのも特徴で、日本女性の大学進学率58.23%を上回るほどです。女性の社会進出も日本以上に進み、フィリピン同様アジアでも有数の女性管理職の多い国となっています。
タイの大学では、学校によって卒業式を行う時期が大きく異なります。これはタイ王室の王族が全ての卒業式に出席し、卒業生一人一人に卒業証書を手渡すことによります。タイ人にとっては人生最大のイベントといっても過言でなく、家族や親しい友人を含め数十人が集まる事も珍しくはありません。当日は、制服の上にチュットクルイといわれるガウン状の衣装を羽織り出席します。この衣装は大学や学部によってデザインが異なり、専属のカメラマンを引き連れて写真撮影を行なう事もあります。
このように、大学の卒業式はタイ人にとって非常に重要な儀式となるため、リハーサルも数回行われます。しかし既に就職して働きはじめている事も多く、大卒社員が卒業式のために数日間休みを取ることはタイでは常識となっています。タイには無試験で入学可能な公開大学として、ラムカムヘン大学(学生数36万人)・タマティラート大学(学生数16万人)が開校されています。様々な形で国民が高等教育を受ける機会を設けているため、高校卒業資格を取るため働きながら学校に通う人も多く、国民の教育に対しての関心は高まり続けています。