タイ、感染拡大防止に非常事態宣言へ。失業者や企業にも救済措置
タイ政府は、3月24日に、26日から有効となる非常事態宣言が出され、また、25日に具体的な感染拡大防止に関する規則が出され、企業活動へ影響が一定予想される。規則は、次のような16つの条項からなり、それぞれの条項に関する重要なポイントを以下のようにまとめることができる。
- 第一条、感染リスクが高い場所への立ち入り禁止。具体的には、17日の閣議決定で一時閉鎖が決まった場所(教育機関、スポーツ関連会場、娯楽会場、飲み屋、マッサージ、展示会、コンサート、宗教文化集会など)や、今後、知事が定める場所である。
- 第二条、感染リスクが高い場所を閉鎖するよう、都知事、県知事が管理する。具体的に、スポーツ関連会場や子供の遊び場は、全国閉鎖。娯楽施設、風速営業法下の店、マッサージ・スパーやフィットネスなどは、バンコク都内および隣接5県にある店を閉鎖。
- 第三条、タイへの入国経路および入国手段、陸海空すべて封鎖。ただし、必要物資の運搬関連や、外交官・国際機関の職員、ワークパミットを所有する外国人、タイ国籍保有者を除く。(タイ国籍保有者の場合は、72時間以内に発行されたFit to Fly健康証明書を提示する必要がある。)
- 第四条、物資の買い溜めを禁止。薬、医療物資、食品、飲料水や日常生活に必要な生活物資の買い溜めを禁止する。規制を受けている製品の場合、製品の品質や量、そして、価格や輸出については、関連法令に従う。
- 第五条、集会の禁止。密接となるようなあらゆる集会、社会の不安を煽るような集会を禁止する。
- 第六条、報道に関する規制。コロナに関する嘘の情報をばらまいたり、社会の恐怖を煽ったり、誤解がおきるよう情報を捻じ曲げたりしてはいけない。当局が設置したCOVID‐19感染拡大対策本部が定期的に情報を公開する。
- 第七条、感染拡大防止に向けた準備、
・知事は各地域において非常事態に関する運営を行い、必要な対策や支援を行う。
・医療関係者は、医療関係の物資や医療機器の準備をし、さらに、公共・民間施設と協力しながら、隔離施設や仮設病院に改造するようにする。
・ほかの県から渡航してきた人については、隔離に関する、適切なアドバイスを提供し、徹底するように管理する。
- 第八条、感染によるリスクが高いグループについては、自宅待機とする。具体的には、70歳以上の者、持病を持つ者(糖尿病、高血圧、脳や心臓血管病、呼吸器官関連の病気、アレルギー)、5歳以下の子供という、3つのグループがある。ただし、治療に行く場合や、医療関係者として従事したり、金融機関関連業務に従事したり、メディア、通信や郵便、交通や運送、食品関連の業務に従事する場合や、警察、検察や裁判関連の業務や、ほかに許可された場合を除く。
- 第九条、出国に関する対策、タイで勤務または、滞在していない外国人に対してビザの発行を厳格化するように、外務省、内務省、警察庁に対して命令。また、タイから出国したい外国人や非滞在者については、第十一条にある対策を講じた上、出国の便宜を図る。
- 第十条、バンコク内の治安、これをきっかけに、事故や犯罪、感染拡大が懸念される集会、感染拡大につながるいたずら、国民に迷惑となる行為などがないよう、警察が検問などをより頻繁に設置して徹底する。また、県を超えた通行などについては、検問を設置し、感染者の移動などを監視する。
- 第十一条、感染対策、
・活動の前に、表面の清掃を行い、毎日ごみ捨てをする。
・活動と関連する者は、マスクを着用するようにする。
・石鹼やアルコール、消毒液で手洗いをする。
・座席は1メートル以上になるようにする。
・密接にならないよう、人数を制限したり、活動時間を短くしたりする。また、必要におうじて、携帯電話による追跡や、14日の隔離期間を設ける。
- 第十二条、営業を続けてよい場所。病院や医療機関、薬局、レストラン(持ち帰りのみ)、ホテル(滞在のみ)、コンビニや商店、デパート内にあるスーパー、薬局、食品売り場と日常品、工場、金融機関(証券会社、銀行、その他金融機関、ATMなど)、市場(食品、ペットフード、薬や日常品のみ)、ガソリンスタンドやガスボンベの売り場、交通サービスや運送業者(商品や食品デリバリーを含む)、政府機関、民間企業(ただし、民間企業の場合は、政府が定めた対策ガイドラインに従い、必要措置をとる。)
- 第十三条、県を超えた移動を自粛するように要請。
- 第十四条、社会的、文化的な儀式は、必要に応じて行ってもよいが、政府が定めた対策ガイドラインに従う必要がある。
- 第十五条、違反に関する罰則規定
- 第十六条、全国を非常事態宣言の対象エリアとする。
経済への影響に関する対策は?主に、失業者や企業に対する救済措置
多くの中小企業が閉鎖命令を受けて、それによる失業者や今後に続く経済への影響が予想される中、次のような、不況対策が行われた。
1)企業支援策
・緊急の低金利融資。政府系銀行の中小企業銀行(SME Bank)が100億バーツの予算を組んで、300万バーツを上限とする低金利融資(3%)を実施した。
・納税や税制申告の延期。いくつかの税制に関する緩和策が実施され、企業のキャッシュフロー改善が期待される。具体的な措置の事例としては、非上場企業の法人税納税そのものの延期。閉鎖命令を受けた企業とそれによって影響を受けたとされる企業に対してすべての税制申告(VATや特別事業税も含む)の期限を延期。閉鎖命令対象となった企業に多い物品税の納税も延期。石油関連物品税の納税を延期。保健省が認定した医療物資や医療機器に対する輸入関税の免除。また、債務整理を目的とする活動に対する税金や諸手数料の免除も実施し、企業と個人両方とも活用できる。例えば、一種の収入とされる債務免除に対する税金や諸手数料の免除、債務支払いのための不動産売却に対する税金や諸手数料の免除、債務支払いのための資産譲渡・物やサービス販売に対する税金や諸手数料の免除がある。
2)失業者支援
・社会保険制度に加入している従業員については、やむを得ない事情で勤務できなくなる場合、給料の50%に相当する手当てを、最大180日間もらえる。また、閉鎖命令により、事業者が休業し、収入が一時なくなる場合は、給料の50%に相当する手当てを、最大90日間もらえる。
・社会保険制度に加入していない従業員については、300万人を想定し、毎月5000バーツを3か月間給付する救済策を実施する。
・個人向けの低金利ローンの実施。政府が900億バーツを予算を組み、無担保の低金利融資を提供する。緊急融資は、1万バーツを上限に月0.1%、特別融資は、5万バーツを上限に月0.35%というレートで実施する。また、政府系の質屋が、月0.125%でサービスを提供する。
・個人に対する税制支援は、個人所得税の申告を8月に延期する、健康保険の控除枠を1.5万バーツから、2.5万バーツに引き上げ、医療関係者の危険手当て収入に対する免税を実施する。
・失業者に対するトレーニング(9800人規模)を実施し、毎日150バーツの日当を支払う。
3)銀行による救済策
銀行各社が金利の割引や、元本の、半年から一年の返済延期プランを実施した。
4)証券市場に対する信頼回復
・債券市場に対する対策。債券市場の暴落による企業年金や投資信託の損失を緩和するため、中央銀行は、商業銀行の購入した高格付MMF型および債権型投資信託を担保にする融資を実施し、資本市場が回復するまで継続できると発表した。予測としては、1兆バーツ以上の高格付MMF型および債権型投資信託が市場にあるため、、中央銀行がその規模まで融資できる。また、民間企業の新規発行債券に対しては、銀行協会や政府系銀行、保険業界、政府年金基金と一緒に700‐1000億バーツの基金を作り、優良企業の新規発行債券を引き受けていく。政府系の債券については、中央銀行が直接継続的に購入することで十分な流動性を供給し、安定化させる。
・株式市場に対する対策。千億バーツ規模の株買い支え基金の設立検討に入った。国内の機関投資家や個人投資家に対して投資信託を販売し、政府系ファンドからも1000億バーツ規模の資金を捻出する予定。投資戦略としては、SET50やSET100にある株式の買い支えであるが、12兆バーツの時価総額があるタイ株式市場を、その規模の基金で買い支えられるかどうか業界から疑問視される。
引用元
- https://www.bangkokbiznews.com/news/detail/872653
- https://www.bangkokbiznews.com/news/detail/872408
- https://www.mol.go.th/news/คนตกงาน-ผู้ประกอบการ-เฮ-หม่อมเต่าแถลงมติ-ครม-คลอดมาตรการเยียวยาพิษโควิด-19/
- https://www.bangkokbiznews.com/news/detail/872362
- https://www.moneyguru.co.th/lifestyle/articles/มาตรการช่วยเหลือลูกหนี้จากไวรัสโคโรน่า
- https://businesstoday.co/cover-story/22/03/2020/ตราสารหนี้/ https://www.prachachat.net/money-management/finance/news-434471